医療法人社団六心会恒生病院

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静脈血栓塞栓症

 ニュースなどでエコノミークラス症候群という病名を聞いたことがあると思います。航空機の座席の狭い椅子に長時間座ったことが原因で発症するためこのような名前がついています。これはエコノミークラスだけではなく、車などでの長時間の運転によっても発症することがあるため、旅行者血栓症と呼ばれることもあります。
 長時間同じ姿勢が続いた場合や、水分不足などで血流が悪くなることにより、静脈内に血栓ができてしまうことがあります。血栓は足にできることがほとんどですが、血栓が血流に乗って流れていき、心臓を通過して肺の動脈に血栓が詰まると、肺血栓塞栓症を引き起こし、重篤な病態に陥ることがあり、場合により突然死につながる重大な病気です。
 この疾患が近年注目されてきたのは、最近の調査で年々患者数が増加しているからで、発症者数は年間10万人当たり3人程度と報告されています。
 
〈原因〉
 長時間同じ姿勢で椅子に座ったままでいるなど、足を動かさない状態でいることにより、血液の流れが停滞します。足の筋肉はポンプの働きをしており、筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことにより静脈の血流を促進させます。歩くなど足を動かすことで血液を循環させることができますが、飛行機や新幹線、車での長時間の移動など、ほとんど足を動かさない姿勢でいることで血栓ができやすくなります。
 また、足が不自由な場合や、寝たきり、足の骨折で長期安静が必要な状態でも足の静脈血の流れが悪くなり、静脈内に血栓ができやすくなります。そして最近ニュースで取り上げられており見逃すことができないのが、災害時に車などの狭い空間での避難生活を余儀なくされたことが原因で急性肺血栓塞栓症を発症し死亡するケースが報告されていることです。
 一方、血管がなんらかの原因で傷つくと血栓ができやすくなる他、血液が固まりやすい体質として先天性血栓性素因(アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症など)や後天性血栓性素因(高リン脂質抗体症候群、担癌状態など)によっても血栓ができやすくなります。
 
 足の静脈の中にできた血栓が血液の流れに乗って、右心房、右心室、肺動脈まで運ばれてきて、肺動脈を閉塞させると、肺血栓塞栓を発症します。深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症は極めて関連が深いため静脈血栓塞栓症と呼びます。

主な検査

・造影CT検査
・心エコー
・肺動脈造影
・肺血流シンチグラム
・血液検査
・下肢静脈エコーなど

治療法について

 治療法は病態に応じて適切に行われる必要があり、肺血栓塞栓症の重症度、合併する疾患、深部静脈血栓の有無、治療する施設の特性によって変わります。
大きく分けて、「薬(抗凝固療法、血栓溶解療法)」、「カテーテル治療」、「手術」の三つがあります。下肢に血栓が残存している場合は下大静脈フィルターを入れて、これ以上血栓が肺に流れていかないように予防する必要があります。また、極めて重篤な状態のときは経皮的心肺補助循環装置(PCPS)を装着することがあります。


〈予防〉
・長時間同じ姿勢をとらず、足の運動をする
・適度な水分摂取を心がける
・脱水を招くアルコールやコーヒーの多飲を避ける

*手術やカテーテルといった医療行為が原因で発症する急性肺血栓塞栓症を、どのように予防するかということがとても重要だと考えられています。特に手術後に発症する急性肺血栓塞栓症は、予後が悪いという点も指摘されています。医療現場で発症する急性肺血栓塞栓症を予防するガイドラインが発表されており、これを遵守することが大切です。

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