2021年 06月28日 |
闘病記 その7 歩いていいの? |
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さて取り残されてしまった私、どうしましょう…
首は動かせないので目を普段動かせる以上の角度に動かして確認すると、ベッドコントローラーが手の先10センチほど向こうにあるようだ。
ただ届かない。
意を決して頭をベッドから上げてみる。
「痛い!」
だがこの時、奇跡的にコントローラーに手が届いた。ようやく寝転ぶことができる。頭を反対の手で支えながら、もう一方の手でコントローラーを操作する。もちろん見えないので手探りだ。
「足が動くぞ?ん?このボタンは動かないな、イヤ違う、動いてないんじゃない、ベッドが高くなってるだけなんだ。」
いろいろな発見をしながらどうにか仰向けに寝ることができた。
それからもやっぱり寝返りは難しい。体もまだ火照りがあるのでもやもやする。
ということでうつらうつらしながらいると、お昼の時間がやってきた。手術から最初の食事が届いた。
初回の食事にしてはなかなかに豪勢w
だが、違和感、わかりますか?
箸もスプーンもありませんね、そうです、この病院の食事はスプーンや箸などは全部持参、ということで私も持参しているんですよ。
理解はしている、問題ない。
だが肝心のそのスプーンたちはカバンの中だ。そのカバンの存在場所はというとベッド脇の床の上、今の私の体で取りに行けるわけもない。
こんなことですら人に頼まないといけないことに落胆しつつ、ナースコールを押し、カバンからスプーンを取り出してもらった。
味は、全くない、そりゃ全身麻酔後、初めての食事だし、絶食になってからすでに30時間以上、おかゆさんだし、いろいろ考えれば食べられることだけでも感謝しないと。
量は5割、今の自分には精一杯な量だ。口をゆすいで再び横たわった。
下膳しに来てくれた看護師さんがふと言われた。
「午後からリハビリの先生来られますよ。」
こんな、痛みのためにまだ自分で動けない僕に何をしに来るのかは不安ではあったが、恒生病院でも手術当日にリハビリに入ることもあるし、サッと聞き流していた。
お昼3時になった。午後にはまた発熱した。熱にうなされ、まだ電動でしか動けない私に声がかかった。
「リハビリで~す、みさせてもらいに来ました。」
さて、何をするのかな?と思っていたら突然言われた。
「さあ、立ってみましょうか。」
「えっ?」
「立ちますよ~。まずはベッド起こしますね。」
私の了解を得ることなく立ち上がっていくベッド、体勢は立て、だ。
まあしょうがない、郷に入っては郷に従え、とりあえずベッドわきに座って足を下ろした。
「あれ?前かがみだと首が痛くないな。」
新たな発見だった、そう、前方から手術をしたので仰向けで頭を支えると首回りが痛いのだが、うつぶせ方向だと痛くないことが分かったのだ。
それならぜひ、立ってみようではないか。
促されるままに立ってみる。
「うん?まっすぐ立てないな、頭がグワングワンする。」
「こんなことは聞いていない、めちゃくちゃふらふらする。これは本当に自分の体か?」
この時点で手術からどれくらいたっているのかの自覚もあまりないが、まだ24時間をようやくすぎたところである。熱も続いている。
まずは立位保持、何とかなった。
「次は目を閉じてみましょう、大丈夫、支えますからね。」
目を閉じろだと? やってやろうではないか。目を閉じるとふらついているのかまっすぐ立っているのか全く分からない。それでも10秒間をどうにか乗り切ったようだ。
「はい、いいですよ、では次に行きましょう。」
よかったんだ、えらくふらついていたような気がするけど。
「足を平均台の上に乗っているようにまっすぐ揃えて立ってくださいね。」
促されるままにやってみるが、立ててはいるものの足がプルプル震えている、初めて立ち上がる小鹿のようだ。こちらは小鹿でなくおっさんではあるが。
その後も片脚立位など数段階の評価を経てこの日、朝まで全く自分で動けなかった私に自力歩行の許可が出た。
さて、じゆうなみとなるのかどうなのか、続きます。
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