ドクターTのつぶやき

2021年
06月26日
闘病記 その6 手術からの帰還...

全身麻酔を耐えようと思ったのにあっという間に寝てしまった私でしたが.....

 

 

 

 

 

 

 

 

「次の患者さん入れて!」「外来終わらなくなっちゃうよ~。」と叫ぶ私...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、「わかりますか?」という声が聞こえた。

うん?今外来していたはずだけど、、、

 

 

 

 

瞬間的にそれが夢だったと理解した。もちろん看護師さんへの返答もわかっている、私は手術を受けていたのだ。

 

 

 

 

 

「今は13時半です、難しくて時間がかかりましたが無事に終わりましたよ。」主治医の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

ではさっそくで申し訳ないが看護師さんが聞いてくる前に自分自身で全身のチェックだ。

 

 

 

まずは両手、両足。

 

「大丈夫、動くぞ。」

 

 

 

 

 

それにしてもどうだ、全身麻酔から覚めるのに仕事の夢で目覚めるとは。なんとも目覚めが悪いがこれも職業病か、致し方ない。

 

 

だが、そんなことを考えていられたのも少しの間だけだった。ぼんやりしている間はまだよかった、目覚めるにつれて全身がだるい、重い、熱い。

 

 

 

 

痛み止めの点滴が入っているというが、本当だろうか、帰り際、廊下で相方さんに出会ったようだが記憶はあいまいだ。手を挙げて応えたのだが、その手が左手で、「どうせなら右手で手を挙げてあげてよ。」という主治医の声だけが記憶に残っている。

 

 

 

 

 

とりあえず、生還した(←大げさ)。

 

 

 

IMG_3708.JPG

 

 

 

 

 

部屋に戻った、戻り先は個室だそうだ、そういえば朝部屋を出るときに部屋が変わりますからね、と言われていた。

 

 

 

それにしてもやっぱり全身が熱い、火照るというようなものではない、燃えるようだ。

 

 

 

「熱は38度ありますね、体もすごく熱いです。」看護師さんの声が聞こえた。相も変わらない全身のだるさで記憶もとぎれとぎれだ。すぐさま眠りに落ちたようだ。

 

 

 

次に気が付いたのは1時間後、看護師さんが1時間たったことを教えてくれた。大量の発汗があるようだ、体を拭いて着替えさせてくれた。そのままの状態でまた眠りに落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

さらに2時間が経過したようだ、看護師さんの訪問を受ける。少しけだるさは取れたがまだまだとにかくしんどい。

 

 

「大丈夫ですか?」の声にうなずくことしかできない、しかし熱は37度4分まで下がったようで発汗も少し落ち着いた。記憶は相変わらずとぎれとぎれではあるが、とにかく手術創も痛いしそれ以外に全身も痛みとだるさで体が動かせない。

 

 

 

 

21時ごろだろうか、ようやく少しだけだが周囲の環境が見渡せるようになった。個室にうつったというのは本当のようだ。他に患者さんはいないらしい。だが、見える範囲は自分の目の動かせる範囲のみ、首を曲げての確認はとてもじゃないができない。

 

 

 

 

夜勤の看護師さんがやってきた。この看護師さんは入院中に担当してくれたのはこの1回だけだったがとにかく優しく接してくれた。

 

 

 

「私はどれぐらい自分で動いていいのですか?」と聞くだけの余裕も少し出てきた。

 

 

 

「起き上らなければ横向いたり、ベッドの上でごろごろしてもらって結構ですよ。」と全身を使って表現してくれた。その姿が面白くてクスッとしたのだが、「動くなんてとても無理。」、それが率直な感想だ。

 

 

 それから翌朝まで、仰向けでしか寝られないことのつらさと、首から肩にかけての痛みとのせめぎあいが続き、30分ほどまどろんでは痛みで目覚めるのを繰り返した。

 

 

 朝6時、看護師さんが来てくれた。「眠れましたか?」と聞かれたがやはりうなずくだけしかできなかった。

 

 

 

 

 9時過ぎ、全身の清拭に看護助手さんが来られた、昨日の寝汗もひどくて全身がべとべとしていたので、めちゃくちゃ気持ちよかった。首の痛みは続いているので体をゴロゴロひっくり返されるのは苦痛ではあったが、温かな濡れタオルの気持ちよさが上回った。

 

 

 

 

 

IMG_3709.JPG

 

 

 

 

 

 

 それが終わると、日勤の看護師さんが「嚥下評価してみますね。」とベッドを起こし始めた。

 

 

 

「えっ、聴いてないです、自分ではまだミリも動いてないんですよ。」

 

 と思ったがすでにベッドは動き始めている、「ちょっと待って」の声はその時着信した看護師さんのPHSの音にかき消されていた。

 

 

 

 

 

 ただ、座ってしまえばそこでなら耐えられる。血圧は175/、少し高いが術後、痛みもあるしこんなものだろう。

 

 

 

「はい、飲んでみてください。」

 

 

 

 お茶を渡された。とりあえず飲み込んでみたが、のどが痛い。せき込みはしなかったが努力が必要だ、少し時間がかかるだろう。 だが、その努力は看護師さんには伝わらない。

 

 

 

「あ、むせないし飲みこめますね。」

 

 

 

 看護師さんは笑顔だが、こちらはぎこちない笑顔だ。

 

 

 

 

 

というわけでお昼から食事が出るらしい。だがまだ動けないし、歯磨きとかどうするのかなどと考えていると看護師さんはそのまま出て行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん? ベッドは起こされたままだ。私はまだこの体勢でい続けるのには無理がある。

 

 

 

 

 

「私のこのベッドの角度、なんとかしてくださ~~い!動けないんですけど!」

 

 

という言葉はそのまま閉められた部屋のドアに消えた。

 

 

 

 

 

 

 

もう少しだけ続きます。

<   2021年6月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
月刊アーカイブ

pagetop